紙辞典

画仙紙の呼び方や由来について

画仙紙の名前の由来

画仙紙の名前の由来

画仙紙は中国の宣紙をわが国で模したもので、画牋(箋)、画宣、画撰、雅宣、雅箋、雅仙など種々の文字を持って表現しています。
画仙紙は絵を描いたり、字を書いたりする、大判の紙を指しています。
今日では画仙判というサイズがあり、広義には画仙判の大きさで作った紙は、楮、雁皮、三椏などの和紙であっても画仙紙と呼ぶことが多いです。
昭和四十八年の「人民中国」の宣紙の記事中に『新唐書・地里紙』の記載によるとして九百年余り前に、安徽の宣州府(現在の安徽省涇県一帯)で質の良い紙を産し貢物として毎年皇帝に献上されていて、産地が「宣州府」であるとことから宣紙の名前を得たといいます。
また一説には宣紙が宣城で売られていたことから、この名前を付けたともいうと記してあります。

画仙紙の厚さによる呼び名

画仙紙の厚さによる呼び名

中国宣紙には単宣、夾宣(二層紙)、三層夾貢宣などの区別があります。
単は単(ひとえ漉き)、すなわち薄手であり、夾は重ね漉きの意味の厚手です。
夾宣は漉き船(水に溶解した原料を入れたもの)から原料を2回掬ったもので、二層紙は漉いた紙を重ねて水を切り乾燥させる際に2枚一緒に重ねて乾燥させたものです。
わが国では一般に画仙紙と書き、寸法により大画仙(三尺二寸×六尺)一般に販売されている
3×6(さぶろく)、中画仙(二尺七寸×五尺)、小画仙(二尺三寸×四尺五寸)
一般に販売されている全紙(ぜんし)と呼びます。
宣紙のうち四尺紙、五尺紙、六尺紙は二層紙の夾宣で、わが国の定鑑界や表装界ではセイロッピあるいはセイロッピキ(青六疋)と俗称します。

画仙紙の厚さによる呼び名

画仙紙の起源

史書によると、後漢の蔡倫が元興元年(一〇五年)に初めて樹皮、麻頭、敝布、漁網などを原料にして紙を造ったということになっていますが、中国では前漢時代にはすでに紙ができていたという事実は考古学的に証明されています。
蔡倫紙は、植物繊維を細かくつぶして水に分散させ、これを網ですくい上げて薄い層にして乾燥させたものです。
この製法は、時代を経て各地方に伝播して、原料やその処理方法に改良を加えられましたが、その製紙原理は変わりません。

日本への伝来

唐のころから、朝鮮半島を経て、あるいは大陸から直接我が国に輸入され、飛鳥時代や奈良時代の人々によって一般に「唐紙」あるいは「麻紙」と呼ばれて珍重されました。そして製紙術をも学んだ日本人は、日本に産する楮(梶などとも書かれた)等を原料として旧式の「溜め漉き」によって紙を作り、やがて日本特産の雁皮<がんぴ>(斐ともいった)を活用して「流し漉き」という能率的な抄紙法をも発明し、さらにトロロ葵や糊空木の粘液を分散剤に応用して、日本独特の見事な「和紙を」産出するようになりました。
平安時代以降は、日本全土の各地で美しくて強い和紙が多く生産され、日本文化の担い手となりました。
現代では和紙は、楮<こうぞ>、三椏<みつまた>、雁皮<がんぴ>の靭皮繊維を主成分とし、時には藁や木材パルプなども混入し、蒸解剤には石灰のほか炭酸カルシゥムやソーダ灰、苛性ソーダなどを使用し、叩解は「手打ち」によるほか叩解機(ビーター)も用い、「手漉き」による他「機械漉」で抄造されます。

画仙紙の原料の楮
画仙紙の原料の楮
画仙紙の原料の三椏
画仙紙の原料の三椏
画仙紙の原料の雁皮
画仙紙の原料の雁皮

和紙の中で、特に唐紙を模したものを「和唐紙」、また宣紙を模したものを「和画仙」などと称して作られています。

土佐清張紙

土佐清張紙

清張は江戸幕府で、租米を倉に入れるのに要した諸費用の金額を記入した帳簿のことで、清張紙はいわば高級な帳簿用紙という意味です。土佐には古くから最も良質の清張紙を産していましたが、現在は仁淀川上流の吾川村だけに残っています。良質の楮を石灰煮熟し、手打ちで叩解、萓簀で流し漉きし、天日乾燥するなど、古い技法が守られているので、風格があり味わい深い紙になります。

布目紙

布目紙

三椏などの原料で抄いた湿紙を一枚ごとに木綿の布で覆い、圧搾機にかけて水分をしぼり取って、布目の凸凹を紙に写うつしたものです。

檀紙

檀紙

檀紙は平安時代からあってくげにあいようされ、中世にも武士社会の公用かみとなり、現在も諸礼式の用紙として使われます。もともとは皺がなく、元禄期からしわができましたが、大高、中高、小高という檀紙の種類は、皺の高低によるのではなく、紙の規格寸法の大きさの違いです。皺のつけ方は、特にネリをきかせて漉いた楮紙で、圧搾を終わり乾燥前の湿紙を木盤の上に3枚ほど張かさね、仕上げる上枚を水をうちながら一枚重ねて張り、船体の端の方から斜めに傾けながらはぎとります。台数の枚数、厚さ、剥ぎ方で皺はいろいろに変化します。

王朝紙

王朝紙

竹簀の上に荒い目の布を張りつけて漉いた紙です。紙肌の平滑な方を表面都市でこぼこのある方を裏面としますが、紙層に布目の厚薄を生じ、一種の布目透かしになります。布目を工夫するために、太くて丈夫な木綿糸で特に手織りし、柿渋にひたして強靭にしたものを使います。原料は三椏や雁皮で、かな料紙などに用いられます。

染紙

染紙

染紙は、写経用紙などとしてなら時代からつくられており、植物染料が主体でしたが、近年は、顔料、化学染料が多くなっています。染色法には紙を漉くとき、紙料に染料をまぜる漉染め、出来上がった紙を染料に浸す浸染め、刷毛で染料を塗る引染めの三つがありますが、製紙家はほとんど漉染めで、加工業者は浸し染め引き染め法を使います。染料はその配合や媒染剤などとの関係で無限に変化し、染料の種類はきわめて多彩です、料紙用の染料は墨つきをよくするため、膠、でんぷん質の糊などを塗ります。原料は楮紙です。

紺紙

紺紙

藍染めには蓼藍から作った玉藍または蒅(すくも)藍がもちいられ、それを水にいれ、木灰汁(きあく)、石灰、麩(ふすま)を加えてはっこうさせ、その際の還元性を利用してアルカリ性の溶液を作ります。この溶液に紙をつけ、引き上げて酸化させ、水洗することをくりかえして染めあげます。そのごく濃い藍染の紙を紺紙を言います。近年はこの植物染料の代わりにロックウッドを引き染めして紺紙を作る方法もあります。この原紙は三椏です。

墨流し

墨流し

墨流しは古くからわが国で行われている染色の一つで、王朝時代には料紙の模様としてきわめて珍重されました。この技法は福井県武生市今立町やそのほかの地域でも作られるようになりました。墨、藍、紅などを水の動きにまかせて文様を描かせ、紙に写しとったものです。原紙は三椏です。

具引雲母引唐紙

具引雲母引唐紙

唐紙は具と雲母を使うことが特徴で、普通は具引きしたものに雲母で文様を表現しますが、逆にまず雲母を引いて具で文様を表す場合もあります。この標本紙はまず雲母を引いた料紙で、原紙は楮紙です。

具引雲母唐紙

具引雲母唐紙

膠で胡粉をといて絵具をまぜ、刷毛で原紙「越前鳥の子」に引き、ローラーをかけて平滑にします。いわゆる色具引紙を作ります。唐草模様などを彫った版木にふのりでといた雲母をタンポでむらなくつけます。胡粉引きの紙を版木にふせてバレンで二度文様を印刷します。出来上がった紙にローラーをかけ、さらに一枚ごとに麻布を挟んで何枚か重ね、ローラーで圧縮し布目を打ちます。

砂子振紙

砂子振紙

原紙を仮張り台に張り、礬水(どうさ)を二回引き膠液を塗ります。竹筒の先に金網を付けた容器(箔篩-はくふるい)に小豆、豆などとともに洋金箔を入れて、紙面に砂子をばらまきます。このあと自然乾燥して、刷毛で密着していない余分の砂子をはきとり、薄い膠液で剥落止めをします。この原紙は楮紙です。

染砂子振紙

染砂子振紙

染紙を仮張りして礬水(どうさ)を二回引き、膠液を塗ります。砂子振紙と同じように準備して、洋金の砂子をばらまき、仕上げていきます。この原紙は三椏です。

小石野毛入紙

小石野毛入紙

小石は金銀箔の切箔、野毛は細長い箔のことです。砂子振紙と同じように準備をしたあと、小石や野毛を適当にばらまいて乾燥させ、薄い膠液で剥落を止めています。原紙は鳥の子紙です。

具剥奪紙

具剥奪紙

原紙の両面に礬水(どうさ)を引き、下染めしてから具引きし、租の紙をもんで具(胡粉)を落とし、こんどは残っている具を膠で止める。その上に特殊液を三から四回刷毛で引いて仕上げた紙です。この原紙は楮です。

空摺唐紙

空摺唐紙

原紙の両面に礬水(どうさ)を引き、その上に染料でした染めしてから、胡粉を着色して塗り、湿っている間に版木にのせて文様をあらわします。あとで書の表現をよくするための特殊液を三から四回塗り、乾かせてからローラーをかけて絹目を付けます。空摺というのは、文様を彫った版木に雲母や顔料などを塗らないで刷ることをいいます。こちらは鳥の子に加工したものです。

蠟箋

蠟箋

膠で胡粉をといて絵具をまぜ、刷毛で原紙「越前鳥の子」に引き、ローラーをかけ平滑にします。いわゆる色具引き紙を作ります。これを版木の上に胡粉面を上にのせます。版木から外れないように紙をしっかりと固定し、特殊な方法で圧力と熱と摩擦を同時に加えると、胡粉は半透明となり、絵具が濃く浮き出し、版面の模様が美しく表れます。さらに麻布を一枚一枚に挟んで圧力をかけ布目を付けます。

純銀磨出し

純銀磨出し

越前三椏紙の原紙両面に礬水(どうさ)を引き、表面に具引きをしてから、銀砂子を文様的に降ります。そのあとさんから四回、表現をよくする液を塗り、それを版木の上にのせて、刷ると、版木の文様は銀の上に現れます。原紙は三椏です。

破り継ぎ、切り継ぎ

破り継ぎ、切り継ぎ

指で色紙をちぎり、ふるえるように細かい微妙な線を継ぎ合わせたものを破り継ぎ、直線に切った紙を継ぎ合わせたものを切り継ぎと言います。料紙と唐紙とを貼り合わせることが多いです。このような料紙は、かな文字と組み合わせで平安朝の最高の美を示すものの一つと言えますが、『三十六人集』などのなかにも、この技法の料紙が含まれています。ほかに重ね継ぎなどの技法の料紙もあります。

染唐紙

染唐紙

原紙をまず浸染めし、一回礬砂(どうさ)引きしたのち、書の表現をよくするため特殊な液を塗ります。それを乾燥してまた塗ることを数回くりかえし、版木によって色で文様をつける。最後にローラーをかけて絹目をつけます。この原紙は楮です。

紙辞典

書の紙

書の紙は大きく和紙・料紙と画仙紙に分けられます。
和紙・料紙は楮、三椏、雁皮などの靭皮繊維を主原料にした漢字、かなを書く為の紙であり、画仙紙は十分叩解した稲わら、三椏、各種のパルプなど短繊維を原料とした、漢字や絵画を書く為の紙です。
しかし、書が盛んになるにつれ書の表現は、漢字、かな、近代詩文、少字、篆刻、刻字、前衛書などに多様化し、紙も需要家の要請で多様化しているので漢字を書くためとか、かなを書くためとかの区別はあいまいになっています。
ここでは、書に使う紙を日本製、中国製、韓国製に分けて紹介しています。

越前奉書ー生漉奉書

越前奉書ー生漉奉書

奉書は延元3年(1338)に斯波高経が、今立町から上納した紙に「出世奉書」の名を与えたのに始まるといわれています。純楮を精選した原料で抄いた強靭な紙で、高級な公文書、卒業証書などに使われ、また現在最高級の半画用紙となっている。江戸時代に奉書紙は各地で作られましたが越前奉書は日本第一と評価されました。

越前鳥の子

越前鳥の子

鳥の子というのは紙の色が卵色であることによっており、肌が滑らかで書きやすく耐久性があって「紙王」とも評されます。中世に越前の雁皮紙に名づけられたもので、越前の優れた技術が生み出した雁皮紙に、特にこの名がつけられたものです。したがって本来は純雁皮紙であるのが本来ですが、近年は三椏や木材パルプを使うものもあります。そして純雁皮、雁皮と三椏の混合、純三椏、木材70%楮30%の混合、全パルプと漉き分けています。

間似合紙

間似合紙

間似合紙は、半間(90cm)の間尺に間に合う幅広の紙で、ふすまや掛物に使う必要から室町時代にそれまでより大きなサイズの紙が求められ、作られたものです。名塩は江戸時代にその産地として知られますが、本来は雁皮紙であり、雁皮に泥土を混入するので泥間似合とも言います。金銀箔を打ちのばすのに使う箔打ち紙はこの泥間似合~発展したものです。近年は絵画や書道用紙としても需要が多いです。

雁皮紙

雁皮紙

雁皮を原料にしたもので、雁皮は栽培が難しく、生産量が少ない為貴重です。雁皮の繊維は細かく薄い紙に仕上がります。半透明で光沢があるため、最もきめが細かく、美しい艶があります。薄手のものを雁皮紙と呼び、かな書き用の書道用紙に使われます。厚手のものを鳥の子紙と呼び、かな書き用の料紙や日本画などの画材用紙に使われます。

羅文紙

羅文紙

羅文紙というのは白紙の上に漉きかけられた着色した繊維が糸のようによれて集まり、羅の布目によく似た模様が一面にかかった紙です。平安時代からある漉模様の一つで、西本願寺三十六人集や筋元古今集のうち高光集切、興風集切れなどにみられます。

こちらは羅の織物で試抄し、この模様を型にとって模様漉きしていますが漉法はよくわかっていません。

中世の漉き技術の水準の高さと努力がうかがわれます。

小飛雲

小飛雲

小飛雲は、藍染めした楮紙に礬砂を引き、まるめて砥石で擦って粉末状にし、この紙素を、礬砂を引いた楮紙にくっつけ、毛布の上で自然に乾燥させてから、さらに礬砂を引いて密着させ乾かしたものです。雲母を礬砂に混ぜて引いたり、すすを引いて古代色を出したりする場合もあります。

水玉

水玉
水玉

雁皮紙の地紙を漉いて、さらにその上に藍色の紙料を前面に漉きかける。

次にワラ箒に水を含ませ、降って水滴を落とすと、藍色の紙層に丸い穴があき地紙の白い肌が表れます。

また水玉を冴えた白色に抜くため、地紙の雁皮紙にいくらか白土を混ぜて漉きます。

水玉は丸いのがよく、大小の水玉で遠近感を生じ、広々とした空間を感じさせ、この紙の上に書かれた文字が、宙に浮いたような効果を与えます。

地紙を染め、上掛けの紙を白くして色彩のついた水玉を表す方法もあります。
これを大正水玉紙と呼んでいます。

飛雲

飛雲
飛雲

飛雲も打雲と同じころに現れたふるい伝統の漉模様紙です。

打ち雲のたなびく雲形に対して、飛んでゆく雲の形を表現しようとしているもので、あらかじめ抄いてある雁皮の地紙の上に、染めた紙料(花)をしゃもじで静かに滴れせて飛雲の形を作っています。

この飛雲も色紙、短冊、ふすま紙や装飾用紙に多く用いられています。

繊維の様子がよくわかるように拡大撮影しました。

打雲

打雲
打雲

打雲は平安時代の11世紀中頃から始まっている最も伝統の古い漉模様紙の技術で、色紙、短冊、ふすま紙、装飾用紙などに多く用いられています。この紙は雁皮で地紙を抄き、その上に藍染めした雁皮紙を打ち砕いた紙料を組み込み、手早く操作して雲の山形を作ったものです。

繊維がよくわかるように拡大して撮影しました。